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「夢路、片付け、終わりましたか?」
ちょうど線香の束を直したところで、時間屋が声をかけた。
僕は顔を上げ、その姿を見上げる。
「うん、終わったよ」
葬儀屋としてやっと立派に仕事が出来るようになった頃、季節はもう冬を迎えようとしていた。
時間屋と出会ったのは初夏の頃。だいぶ付き合いも長い。
偶像崇拝との一件で出来た腹の傷も、どうにか完治した。
今はまた時間屋の家に上がり込み、二人で生活している。
実家には今兄夫婦(認めたくないが)が住んでいるし、邪魔はしないほうがいい。
時間屋といえば相変わらずで、優しくて気の利くお兄さんだ。
でも、けして引きずっていないわけではないだろう。
自分が偶像崇拝を殺したことで、やはり壊れてしまったものだってあるはずだ。
僕はそれをそばでちゃんと見ていてあげたかった。
これ以上壊れないように、回復していけるように。
「そういえば時間屋、今朝電話があってさ、なんか明日葬儀までの処置をしてほしいって依頼があったよ」
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