壱【悲願花】

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 時間屋は、不思議そうに首を傾げた。  それもそのはず、僕らのことを知っている人は数少ないはずだ。  裏の人間の一部に関わることもあるが、電話をかけてくることが出来る人なんてそうそういない。  せいぜい友達や退廃世界のような人間だけだ。 「どなたでしたか?」  時間屋は鞄を取り上げて、僕を見た。 「えっと、鏡さんって人」  それは確かだ。きちんとメモを取ったし。  僕はそう言いながら、時間屋の後ろについて歩き出した。  この後は予定が無い。  僕はパラノイアの教会に顔を出そうかと考えていた。 「鏡…知らない名前ですね…まぁいい、明日一応行ってみましょう。待ち合わせ等はしたんでしょう?」 「一応ね。でも知らない診療所だった」 「診療所…」  ポケットからメモを取り出して、確かめる。 「えぇっと、時田診療所」  いきなり、時間屋が足を止めた。 「時田?」  知っていたのだろうか。
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