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過去
バートもミルクが去った後帰ることにした。
過去……
人生には楽しいこと、悲しいこと、腹が立ったこと、嬉しかったこと沢山ある。
たいてい人は嫌な思い出は忘れていくものである……
でも、その出来事が大きければ大きいほど、色濃く残るものであり、ふとした瞬間に思い出し、夢にも度々出てきてしまう。
ミルクは、家に着いた。ドアを開けたが家の中は閑散としており、薄暗い。
ミルク家は、元々4人暮らしで、ミルクと両親と五つ下の妹がいた。両親は、陽気で、しかし、どんなことがあっても、ミルクと妹を守ってくれていた。
そして、ミルクと妹にどんな苦しいことがあっても、笑顔で明るく生きていれば、いいことがあると教え続けてくれていた。
妹はまだ小さくて、ミルクをにぃにぃと呼び、ずっとミルクのシッポを掴み、引っ付いていた。たまに高い高いをしてあげると天使のような笑顔で喜んでくれた………
しかし、ミルクがそんな幸せに満ちあふれた生活を送っていたことに気付いたのは、ある出来事の後だった。
ある日、天気が良く家族で散歩に出かけた。いつも通る散歩道だった。そう、いつもは平和そのものの散歩道だった。しかし、その日その散歩道には異様な光景が広がっていた……、草木に飛び散った血、何の動物の物か分からない足、尻尾……
両親は、その危険なにおいを感じ取り、子供を掴んで振り返り、走ってその場から逃げようとしたが遅かった。
振り返ったら野犬が2匹待ち構えており、口から唾液を垂れ流し、「グルルルル」と低い声で鳴き近付いてくる。
また、振り返ったら、もう一匹ノソノソと歩いてくる。
家族は、横の森に入り込み、全速力で走った。両親はこの子達だけでも助けねばという思いで走ったが、野犬のほうが体は大きく、そして速く、少しずつ距離が縮まる。母親は妹を父親はミルクの腕を引っぱり走っていたが、母親と妹が捕まってしまい、噛みちぎられようとしている。叫び声が聞こえ、ミルクは振り返り、母親と妹の名前を叫ぶ。
その瞬間父親は家族全員殺られると思ったのだろう、ミルクを遠くへ投げ飛ばし、
「お前だけは逃げろ!そして生きろ!振り返らず走れ」
と言って、野犬に飛びこんで行った。ミルクは、2、3秒動けなかったが、父親が、
「走れ~~~!」
と必死に叫び、それに気付き走りだした。
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