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序章
***
……逃げられた。
煩く鳴り響く警報装置の中で、彼は呆然と立ち竦んでいた。
不測の事態に、考えなくてはと思えば思うほど、霞みがかったように頭がうまく動いてくれない。
あれは自分のイデアが全て詰めこまれた母体だ。
まさかこの段階まできて逃げられるとは思っていなかった。
事前に承諾は得た。何故今更。
……いや、今更理由を考える意味は無に等しい。
まずは見つけ出さなくては。そして、取り戻さなければいけない。「奴」の手に渡る前に。
何年かかっても、絶対に……。
***
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