32人が本棚に入れています
本棚に追加
―――カラカラ
グラスの中で氷を揺らす音。
その音を鳴らす主、ウィリアム・ギバルシュはとある場末の酒場にいた。
右頬に目立つ大きな傷があり、一重瞼の目つきは異様に鋭い。
一目見るだけで堅気ではないとわかる男だ。
「確認するが、こいつを殺るだけでいいんだな?」
ギバルシュが手元ね写真に目をやりながら問い掛けた先、隣の席にもう一人、男がいた。
「あぁ。死体はそちらで処分してくれ」
こんな物騒な話をしているなか、真正面のバーテンは表情すら変えず、黙々とグラスを拭いている。
さながら、映画やドラマに出てきそうな光景だ。しかし、そんな状況に似合わない“違和感”が二人の男にはあった。
「わかった。この依頼承けた。報酬は約束通り頼むぞ」
ギバルシュがニヤッと悪人独特の引きつった笑みを見せる。しかし、その頭には…
女性物の下着が被さっていた。
「頼むぞ。失敗した場合は報酬はなし。わかってるな?」
そう返した依頼主の男も…
頭に女性物の下着を被っていた。
「安心しろ。今まで依頼にしくじったことは一度もねぇ」
ギバルシュはまたもニヤッと卑しい笑みを浮かべた。パンティを被りながら。 「頼むぞ。必ず、必ず、殺ってくれ」男は先ほどまでの無表情を崩し、パンティを被ったままギバルシュ以上の卑しい笑みを浮かべた。
そして言った。
「あの忌々しい男の息子、カミムラユウイチロウをな」
最初のコメントを投稿しよう!