第一章 冷たい風が吹いてきた

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穏やかな川の流れる音を子守唄がわりに19歳になった天馬は枯れ草の土手で昼寝をしていた。季節の変わり目は毎年体調を崩していたがこの年は健康そのものだった。 「倉田、こっち来て話しようよ・・・お前に言ってもむだか・・・」天馬の横で川に石を投げてつまらなそうに遊んでいた坂村大樹が少し離れた場所でボディーガードの様に何も喋らず無言で立ち尽くす倉田正己に話しかけた。しかし、倉田は答えてはくれない。 大樹は天馬と高校時代に知り合った、暴走族グループスコーピオンのトップにいる人間だとは知らずに大樹は天馬に話しかけた。そして天馬も軽いノリで答えてくれた、そのせいか暫くの間大樹は天馬のもう一つの顔に気付かなかった。確に県内で一番でかい暴走族グループ、スコーピオンのリーダーをしてると知ったときは驚きはしたが恐怖は無かった、むしろ誰にでも優しい天馬が暴走族のメンバーだということ事態が信じられなかった。校内ではどこに行くにも一緒に行動した、二人は意見が食い違いケンカになることも少なくなかったがお互いを信頼している、二人は大親友だった。 倉田は小学生のころ両親が離婚して父親に引き取られていた。出ていくと言った母親を父は止めてくれなかった、その頃から倉田は心を閉ざし人と話しをしなくなっていた。そしていつのまにかケンカに明け暮れる毎日に溺れていたのだった、仲間と呼べる人間は一人もいない、一匹狼で街をさ迷っていたとき天馬と出会った。倉田は天馬にナイフを向けたのだが天馬は笑った、その笑顔に過去の記憶が重なり何故天馬が笑ったのかかが気になり天馬のことが気になった。気付くと倉田は天馬のボディーガードをするようにいつも少し離れた場所をついて歩くようになった。 倉田のはなしはまた語ることになるだろう、天馬は倉田については何もしらない。 天馬は中学を卒業したあとどこでもいいから入れる高校を探し、山流高校に入学した。スコーピオンを仕切っていたが高校だけは出ておこうと考えただけだがその思い付きのお陰で大樹に出会えた。しかし、高校生活を中心に生活をする日々が続いたある日、別の暴走族グループのアンゴルモアと縄張り争いがはじまった。天馬は手を出すなといってスコーピオンから仕掛けることはなかった。その抗争が長引くとチーム内で争いがおこるようになった。
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