第一章 冷たい風が吹いてきた

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「そんなことよりがっかりしたのは君達がしていたことです」田山の一言で神風のメンバーは視線をそらす。 「君達の親の顔がみてみたい。女の子や子どもみたいな自分達より弱いものからかつあげしちゃいけないって御両親は教えてくれなかったのかね?」田山が偉そうにかたる。 「かつあげはしていいみたいじゃねーか」天馬があきれて答えた。 「いいか少年、男には外に出ると七人の敵がいるんだぜ」 「意味わからん、めんどくさいから帰れ」返す言葉も見付からない。 「よし皆の衆帰るぞ」 「ハイ」田山の合図にメンバーが答える。その後ろで少女は立ち上がった、またそれに気付く者は誰もいない。 「カエルがないたらカ~ラス」 「なんか最後まで歯がゆいわ!なぁ」天馬は大樹にいう。しかし、いつの間にか大樹の姿は消えていた。 「大樹は?」倉田に聞いてみる。 「逃げました」倉田は低い声で答えた。 「逃げ足は本当にはえーな」天馬が頭をかいていると少女が近付いてくるのがみえた。 「サンキュー、助かったよ」曇りのない瞳を輝かせ少女は天馬に助けてもらったお礼をいう。 (ねくらじゃないじゃん)大樹の言ってたイメージと少女のギャップに天馬は驚いた。 「悪く思うな天馬・・・」大樹は逃げ続けていた・・・ 「ノート返せ!!」 ・・・優子から。 天馬は先程助けた少女と川原に座って話しをしていた、倉田はまた少し離れた場所でボディーガードを続けている。いつの間にか帰りを急ぐ学生達の群れも見当たらなくなっている。 「へ~、大学行ってないんだ、仕事もしてないんでしょ?ニートくんか」少女は楽しそうに話をしている。 「ニートくんではないけどね、そっちは大学なんでしょ?」 「涼子」 「ふぇ?」 「私の名前、池田涼子だよ」 「あっ、俺は神崎天馬っスよろしく」 「ウィッス!」涼子は明るく答える、ますます大樹の言ってたイメージと違ってきた。それは人違いだと思うほどに。 「俺の友達も三人、涼子と同じ大学いってんだけど、若干一名単位落としそうなんだよね」天馬は大樹の顔を思いだしながら答えた。 「歩こうよ」涼子が立ち上がる。 「おう」二人は枯れ草の道を歩き出す、倉田も後を付いてくる。 「でも県内トップの大学だよ、入れただけで凄いことだよ、私なんかでてきちゃうと何がなんだか。だから真奈美に任せきり」涼子は川を見つめて答える。 「真奈美って?友達?」 「そんなとこ」涼子が苦笑いで答えた。
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