第一章 冷たい風が吹いてきた

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「友達と会話したりとか学生生活楽しいでしょ?」なぜか涼子の笑顔に影を感じた。 「うん・・・・麻美さえいなきゃ」涼子は悲しそうに呟いた。 「麻美?」 「何でもない」涼子は笑顔をみせる。しかし、笑顔は寂しさを秘めていた。 「?」 「天馬って珍しい名前だよね」涼子は話題をかえる。その時後頭部に激しく痛みが走った、世界が複雑にまわりはじめる。 「そうかな?」天馬はそれに気付かずに先を歩いていってしまう。 (ダメ、友達できたのに・・・もう少しだけ・・・・お願い)涼子の意識はだんだんとおのいていく。 「天馬さん!」倉田が涼子の異変に気付き天馬を呼び止める。天馬はその声に振り向き驚いた、涼子が倒れていたから。 「おい、どうした?」天馬は急いで涼子の元へかけよる。 「大丈夫か?・・・なんなんだよ・・・誰か、誰か!」天馬は辺りを見回した、すると天馬の声が聞こえたのか少し離れた場所から男性が急いで駆け付けてくれた。 「天馬!」駆け付けた男が突然天馬の名前をよんだ。 「・・・晃さん!!」駆け付けた男は沢村晃だった。晃の父は有名な精神科医である、晃は父に憧れ中学時代から父を師として勉強をしてきた、今では父に負けないほどの精神科医になっていた。なぜ天馬と晃が知り合いなのかというと、天馬の兄である神崎光馬もまた医師になるため勉強をしていた。光馬と晃は同じ大学に通い共に切磋琢磨しながら医学を学んだ、時々お互いの家に泊まり込み勉強したこともあった。そんなこともあり天馬と晃は顔見知りだった。 「そのこ池田麻衣か?」晃は涼子の顔を見るとすぐに天馬に確認した。 「いえ、池田涼子です」天馬はマジマジと晃の顔を見つめる。 「知らないのか・・・・まぁいいや、とにかくここじゃなんだから家へ連れていこう」天馬は訳のわからないまま涼子を背負い晃の家に向かった。 晃の家は自宅けん診療所になっていた。確に晃は父に匹敵するほどの腕を持っていたが、中学時代から勉強ばかりだった晃は人付き合いが苦手だった、大きな病院から声はかかっていたが断り自分の家を診療所にして地味に開業していた。何人か父に仕事を世話してもらったりもした、その中の一人に涼子もいた。 天馬は晃に言われ涼子をベットに寝かせその横で晃がいれてくれたコーヒーを飲んでいる。この部屋は診療所として使っている、少し古ぼけた感じの部屋だったが不思議と落ち着いた。
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