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「ただいま」突然玄関のドアが開き近くの高校の制服を着た少女が入ってきた。
「お帰り梨絵」晃は玄関に声を投げる、帰ってきたのは晃の妹、梨絵だった。
「ヤッホ~」天馬は笑顔で声をかけた。
「あっ!天馬兄ちゃん!久しぶり」梨絵は嬉しそうに挨拶をした。
「大きくなったな、大人っぽくなったか?」梨絵に最後に会ったのは高校入学前、たった二年で梨絵は見違えるほど大人の女性になっていた。兄とは違い整った顔立ちは間違い無く学校の男子生徒の憧れの的になっているだろう、兄弟にはどうしても見えない。気になったのは前は腰の辺りまで真っ直ぐにのびていた綺麗なストレートの黒髪が後ろで一つに束ねてある、髪をほどいても肩までくらいしか無いだろう、晃の話を思い出してしまった。
「外に誰か立ってましたよ、怖そうだけどかっこいいひとが」
「あー・・・・・ボディーガードかな?」
「え?命狙われてるの?まさかまだ暴走族やってるの?」
「いや、べつにそういう訳じゃ無いんだけど・・・あいつが勝手にやってんだよ、何考えてるかわかんねーんだよな」
「ふ~ん」
「俺そろそろ帰らなきゃ」天馬はそういって立ち上がる。
「もう少しいいじゃないか。コーヒーくらいご馳走するぞ、兄貴の話しききたいし」晃はさっきまでとは違い笑顔で言う。
「いや、また今度で」天馬は時計に目を向けて答えると、玄関に向かった。
「あっ待って、私も」梨絵が部屋から呼び掛けた。
「いいよ、見送りは。ボディーガードいるし」
「ブ~、私はバイトです、途中までおくってください」梨絵は着替えをすませると玄関へ姿をみせる。
「そうですか」天馬は先に外へでた、外では倉田が無表情のまま立っていた。
「なんでお前は俺を守ろうとするの?」天馬は倉田に尋ねた。
「・・・・」前にも何度か倉田に聞いたことがあった。しかし、倉田は答えてくれない。
「お待たせ」すぐに梨絵が出てきた。
「まっ、いいか」天馬は梨絵が自転車を持ち出してくるとその自転車を梨絵にかわって押しながら歩き出す。倉田はいつもの様に少し離れてついてきた。
冬になると日がおちるのがはやい、あたりはすでに真っ暗だった。昼間通った枯れ草でいっぱいの道は暗くなるとどこか不気味な感じがした。
虫達が我先にと声を張り上げ鳴いている道を三人は歩いていた。
「今日池田麻衣が来てたでしょ・・・・どういう関係ですか?」梨絵がききずらそうに問掛ける。
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