第一章 冷たい風が吹いてきた

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「どういうって・・・今日不良に絡まれてるところ助けただけだよ・・・・・・麻美に髪、切られちゃったんだって?」天馬は少し躊躇いながらききかえす。 「なんだ、知ってたんですか」梨絵は一度天馬の顔を見たが前を向き天馬より少し前を歩く。天馬は梨絵が麻衣を嫌ってるように感じた。 「涼子・・・麻衣のこと嫌いなの?」天馬がきいてみると、梨絵は振り返り立ち止まった。 「大嫌い!涼子も智子も真奈美も隆も麻美も!その中でも一番麻衣が嫌い!!」梨絵が突然強い口調で答える、言い終わると梨絵はまた歩き出す。 「晃さんに説明してもらったけどいまいち多重人格ってのが理解できないんだ」天馬は梨絵に並ぶ。 「すぐわかりますよ、会うたびにどんなに酷いやつか」梨絵が冬の星空を見上げた。 「・・・」天馬も真似して空を見上げる、幾千もの星達が今にも崩れ落ちてきそうだった。 「あら、デートかしら?仲良く夜の川原を星空眺めて歩くなんてロマンチックですわね」突然目の前に神戸愛里が現れる。 「なんだ愛里か」二人は愛里に視線を送った、梨絵の顔は赤くなっていたが暗闇のせいで天馬も愛里もそれに気付かない、もっとも明るかったとしてもこの二人が気付くことはないだろう。 「久しぶりにお会いしたのになんだとは無礼ですわ」愛里のお嬢様言葉と人を見下した様な態度は今だ変わっていない。 「こんな時間に何やってんだよ」天馬が愛里に問掛ける。 「わたくしのすることをあなた程度の人間が理解できるわけがなくてよ、オーッホッホッホッホ」愛里の高笑いが夜空に木霊する。 「むかつく!!」二人の関係は子どもの時から変わっていない。 「先を急ぎますので失礼させていただきますわ」愛里は勝ち誇ったまま天馬達とは反対の方向へ向かって歩きだした。 「大人だから我慢・・・・!」 「今の神戸財閥の愛里さんですよね」梨絵が愛里の後ろ姿を不思議そうにみつめる。 「ふぇ?」天馬は梨絵に振り替えると梨絵も天馬に振り返り視線が重なってしまった。愛里の「デートかしら?」という言葉が蘇り慌てて梨絵は視線をはずす、顔が赤くなっていくのを感じた。 「神戸財閥の一人娘なのに送り迎えされてないのかな?」誤魔化すように喋りだす。 「そういえばそうだな、あいつどこいくにも歩きだな・・・」確に愛里はどこへいくにも歩きで移動していた、学校へ通うときも他の学生に混じって歩きで移動している。
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