運命の輪

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春の暖かい日差しは古い町並みをてらしている。穏やかな風が人々の心を優しくさせてくれていた。 子ども達を家まで送り届ける幼稚園バスが商店街を抜けて行く。流れ行く町並みが幼稚園バスの中程に座り景色を眺める神崎天馬の目に次々と飛込んでくる。 あるものは買い物を楽しみ、あるものは立ち話に花を咲かせている。 赤信号でバスがゆっくりと停車する、それと同時に小鳥が道のすみでアスファルトを夢中になってつっついているのが見えた。天馬の視線はその鳥に釘付けになる。 「天馬くん」隣に座っていた三浦優子が天馬に話しかける。 「何?」天馬は優子に振り替えった。 「これあげる」優子は鞄に張ってあったシールを天馬に渡す。 「・・・」天馬は何も言わずにシールを受けとると、自分の鞄に張り付ける。バスがゆっくりと動き出す。小鳥はまだアスファルトを一生懸命つっついている、その時視界のすみに烏がうつる、烏はまるで風に舞うひとひらの木の葉の様にフワリと小鳥の上に降りてきた。そして烏は小鳥を鋭い爪で鷲掴みにすると小鳥の頭を二・三度つっつきそのまま民家の屋根へと連れ去った。 「うわぁ~~~ん」突然天馬が泣き出す、バスに同上していた保育士が天馬の元へ駆け付けてきた。 「どうしたの天馬くん?」 「烏さんが雀さんを食べちゃった」泣き叫ぶ天馬はなかなか泣きやまなかった。 バスを降りると天馬は母親と手をつないで家に帰った。家につくと天馬は急いで着替をすませ、いつもの様に鉄砲のおもちゃを持って近所の空き地を走り回っている。近所に子ども達は何人かいるが優子以外は少し年齢が離れていて時々遊んでくれるが何をしても差が出てしまう、例えば鬼ごっこをしてもすぐに捕まってしまう。だから天馬は一人で遊んでいる時が一番楽しかった。 空き地で遊ぶのにあきた天馬はぶらぶらと商店街へ遊びにきた、いつも母親と自転車で買い物に来ていたが一人でここまで来るのは初めてだった。一人で来る商店街はどこかいつもと違う、なんだか天馬はわくわくしてきた。 「ニャーニャー」 「あっ猫!」天馬は細い路地裏に猫を見付けると、それを追い掛けて路地裏へと入っていく、猫は慌てて逃げ出した。天馬はしばらく猫を追い掛けていたのだが途中で見失ってしまった。 猫を探してみるが猫は見付からなかった。
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