運命の輪

4/11
215人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
気付くとまったく知らない場所に立っていた。商店街に戻ろうと歩き出すがますますどこにいるのか分からなくなってしまう、やっと大きな道に出ることが出来たのだがやはりその道もまったく知らない道だった。天馬はだんだん不安になってきて泣き出してしまう、通行人もほとんど無く「僕のお家どこ?」と訪ねるが無視されてしまう。 しばらくそのままさまよい歩いていると、大きな屋敷が見えてきた。天馬は門の前に立ち、門から向こう側を覗いてみる、門の向こうにはまだアスファルトの道が延びていて、まわりには綺麗に手入れされた芝が敷き詰められている。さらにのびるアスファルトの先に屋敷が堂々と建っていて、玄関の前には大きな噴水が鮮やかに水を吹き上げている、その横で執事の様な男がドーベルマンに餌を与えていた。 「わ~、大きなお家だ」天馬が屋敷を見つめていると、先程天馬が歩いてきた道からリムジンが屋敷に近付いてくるのに気が付いた。それに驚き門から離れると、突然大きな音をたてて門が自動的に開いていく。そして車が門をくぐり中へ入っていく。その時、車の中から一人の少女が天馬を見つめて座っているのに気付いた、膝の上にはおとなしくプードルが座っている、少女と天馬の目が合う。天馬はそれをただじっと見つめていた。車が完全に敷地内へと入っていくと再び大きな音をたてて門が自動的にしまった。天馬はまた不安になり泣き出してしまう。 どれくらいその場で泣いていただろうか、立ち上がると涙をふいてあるきだす。少し歩いたがまだ屋敷の壁はつづいている、そのうち屋敷の隣に木造の建ての建物が見えてきた。入り口には大きな木製の看板がかけてあり『白葉義流武術道場』と書かれていた。しかし、天馬にそれが読めるはずもなく、何の建物かわからないまま入り口をくぐって中にはいる。そこには大きな下駄箱が並んでいた。天馬はそこに座ると再び泣き出してしまう。 「おいおい、どうした?」そんな天馬の泣き声を聞き付け道場の奥から顎髭を生やした老人が現れた。 「お家がわからないの」天馬は泣きながら答える。 「そうかそうか可愛そうに、おいでなかへはいりなさい」老人は優しく天馬を道場のなかへ招き入れると幼稚園の名前をききだし奥へと入っていく、幼稚園の連絡先を調べると電話をかけ天馬の家に連絡してくれた。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!