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「大きなお部屋」一人道場に残された天馬は部屋中を見回している。
「お爺様!」突然子どもの足音が奥から聞こえてきた、その足音はそのまま道場へ入ってくる、現れたのは先程車に乗っていた少女だった。この道場と天馬が覗いていた屋敷は奥でつながっているらしい。
天馬は警戒し鉄砲を少女に向ける。
「あら?あなたは誰?ここで何をしていらっしゃるの?」少女はドレスの様な服を着ていた、そしてお嬢様口調で天馬にたずねる。
「僕迷子」
「迷子?先程あなた愛里のお家を覗いてましたわね?お家に入るつもりだったのかしら?」
「大きなお家だったから見てただけだよ、ここも大きなお家だね」天馬は嬉しそうに愛里に答える。
「あら、ここはお家じなくてよ」
「ふぇ?」
「ここは武術を習う為の道場ですわ、神戸財閥の敷地内ですのよ、勝手に入ることは許されませんわ、出てお行き」
「よくわかんない」天馬は愛里の言う意味が理解できなかった、それも当然である、五歳の子どもに財閥や敷地等と言う言葉が理解できるはずもない、偉そうに言い切った愛里もまったく理解できてはいない。ただ、愛里の家は財閥だった、世界にその名は知れ渡っていて、莫大な権力を保持している、それとならんで愛里の家系は白葉義流という武術を開拓し今もなお現代に受け継ぎ道場を開いている。つまり愛里の家は世界的に有名だった。
「いいわ、あなた名前は?」愛里は左足に重心をかけて立ち腕を組んでまたも偉そうにたずねる。
「僕、神崎天馬」
「わたくしは神戸愛里ですわ」
「お~、愛里来てたのか?」そこへ電話を終えた老人が戻ってきた。
「ねぇ、さいだつって何?」天馬が老人にきく。
「何だいそれは?」天馬は財閥と言いたかったらしい。
「ここでは何をやるの?」天馬は次々と質問をしていく。
「しりたいか?」
「うん」
「先程わたくしが説明して差し上げたのを聞いてなかったの?」
「そう言うな愛里、もうすぐ生徒が来るころだ」老人が言うと早速何人かの男達がやって来た、そのあとも続々門下性達が集まってくる。男達は道着に着替、稽古を始める。天馬は初めて目にする白葉義流の迫力に感動し興奮していつの間にか虜になっていた。その数日後、天馬は母親にすがるように頼み込み白葉義流へ入門した。
「麻衣ちゃん」保育士が池田麻衣を呼んでいる。
(私をその名前で呼ぶな)麻衣はその呼び掛けに返事ができなかった。
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