運命の輪

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「お父さんが迎えにきたよ」 (パパ・・・パパはすぐぶつから怖い) 「麻衣ちゃん」 (私は麻衣じゃない、麻美よ) 天馬は小学二年生になっていた。今でも天馬は愛里と共に白葉義流を学んでいる。 あの時天馬を助けてくれた老人、彼の名前は神戸功三郎という、白葉義流三代目継承者であり功三郎は歴代の継承者の中でも実力は間違いなくトップである、そしてその指導力もトップだった。天馬はそんな功三郎を師匠と呼んでいる。 「それでは組手を始める。先ずは愛里と笹原」功三郎の声で愛里と笹原が前に歩み出る。 この頃の愛里は道場や学校で浮いた存在だった。理由は子どもの頃からの人を見下したような態度。 「今日こそお前の傲慢な態度叩き直してやる」 「あなたでは役不足ですわ」愛里は微笑むと笹原が襲いかかる、決着はすぐについた誰の目にも明らかに愛里の圧勝だった。 「相手を威嚇するだけなら猿山の子猿にもできましてよ、オーッホッホッホ」愛里はそう破棄捨てると一礼をしてもといた場所に戻った。 「やれやれ。次、神崎と五十嵐」功三郎に言われ天馬と五十嵐が前にでる、五十嵐も天馬より二つ年上だった。すぐに組手がはじまる、五歳の時から真面目に白葉義流の稽古をつんできた天馬の実力は相当なものだった。激闘の末天馬は勝利を納めた。 この日の練習を終えて更衣室を出てきた愛里を天馬が呼び止めた。 「なあ愛里、いいのか?」 「何がですの?」愛里は天馬の声に立ち止まる。 「その態度だよ、友達なくすよ」 「心配してくださってるの?心配いりませんわ」愛里はそう言い残すと立ち去ってしまった。 「無器用なやつ」天馬も愛里を見送ると帰路についた。 「ごめんなさい」麻美は必死に誤っていた。 「手を出せ」父親は麻美の手を無理に引っ張る、そして加えていたタバコを手に押し付けた。 「ギャーーー!!」麻美は泣き叫ぶ。 「うるさい!」父親はさらに麻美を叩く、平手ではなく拳で・・・ 「ごめんなさい」麻美は必死にあやまっている、母親は悲惨な現実から目をそむけ台所に隠れていた。 「おい、酒もってこいよ」父親の怒鳴り声が池田家に響きわたった。 「これで今日の稽古は終了する、礼」功三郎の合図で生徒全員が深々と頭を下げた。小学六年生になった天馬もこの中にいた。今日は何故か愛里が稽古に来ていない。気になった天馬は功三郎を呼び止める。何かいやな胸騒ぎがした。
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