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そう言って鞄を持って立ち上がると、何故か優也は珍しく言葉を濁した。
『あぁ…、まき。あのさ……』
『あん?なんだよ』
おずおずと言う優也に旺汰は帰ろうと踏み出しかけた足を引っ込めた。
改まって何かを話そうとするなんてめったに無い事だ。
なんせ二人は家が隣同士。
話なんて嫌でもできるし必然的に帰り道も一緒になる訳で。
という事は余程大事な話なのだろう。
そう思い旺汰は優也を正面から見つめた。
夕日が優也の黒髪を照らす。
その整った顔立ちに微かに影が差し込み益々凛々しい雰囲気が出ている。
『優也ー?なんだよ真面目な顔して』
真剣な顔に思わず吹き出してしまうと、旺汰は優也の肩をバシバシと叩く。
しかし、旺汰の手は優也にあっさりと掴まれてしまった。
『優也………?』
まだ口元に笑みを浮かべたまま旺汰が見つめる。
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