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その日、国中が悲しみに包まれた。この国の王妃が亡くなったのだ。
人々は生前王妃が愛した場所に行き、白い別れの花を置いた。
「――――お母様…っ」
小さな少女が、王宮の離れにある塔で慟哭していた。
――春になったら、花を摘んで花瓶にいけて、お母様と一緒にここで過ごすのよ。
そう言った自分の頭を、母と同じ金の髪を、いつも優しい笑顔で撫でてくれた。
約束ね、と指切りをしたのに――。
「…母様ぁっ……」
どうしてこんなに悲しいの。
苦しい、淋しい、心が痛い。
感情なんかなければいいのに。
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