序章 蒼

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抜けるような青空を見上げると、いつも思い出す。 彼女はあの時、一体何を言いたかったのだろうか。 空は、蒼。 どこまでも、どこまでも続いていく、永遠の蒼。 切れ目のない空に向かって、男は一滴の涙を零した。 「話したい事が…沢山あるんだ…」 空色の両目から、雨が降り注ぐ。 彼女はそれを白い掌に受け止めながら、今までにないくらい優しい笑みを浮かべて言った。 「あの時、言いたかったのはね……この瞳が…」  
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