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しばらくして、利吉も飛龍と一緒に天宮庵へと入って来た。
天翔「二人とも、ここで気が済むまで、休んでいってよいでござるよ…」
そう言うと、天翔は利吉とお菊に水を差し伸べた。
利吉「ありがとうございます」
お菊「…どうも」
二人はそれ以上、語る事なく、ひたすら水を飲み干していた…
飛龍「おい、お前たち…ここへ来たのは、訳ありだな?見る限り、手荷物がないって事は…、旅の者ではなさそうだが…それにその足と草鞋の切れ方、尋常じゃねぇな?」
利吉「…」
お菊「…」
若い男女は、二人揃って口を閉ざしたままだった…
天翔「大丈夫でござるよ。某は、ここで領民の悩みを聞いている陰陽師の天宮翔雲と申しまする。…何かあったのなら話…聞かせてくれませぬか?」
天翔は笑顔いっぱいに、優しくこう問いかけた。
利吉とお菊は、しばらく顔を見合わせてから、やっと利吉が重いその口を開いた…
利吉「実は…」
飛龍「実は…?」
利吉「実は私たち、逃げて来たんです…」
飛龍「逃げて来た?…そんで?」
天翔「もう飛龍殿!二人とも脅えているではありませぬか!…」
飛龍「ちっ…」
天翔「さぁ、話を続けて…」
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