第三話『片恋』(かたこい)

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しばらくして、利吉も飛龍と一緒に天宮庵へと入って来た。 天翔「二人とも、ここで気が済むまで、休んでいってよいでござるよ…」 そう言うと、天翔は利吉とお菊に水を差し伸べた。   利吉「ありがとうございます」 お菊「…どうも」 二人はそれ以上、語る事なく、ひたすら水を飲み干していた…   飛龍「おい、お前たち…ここへ来たのは、訳ありだな?見る限り、手荷物がないって事は…、旅の者ではなさそうだが…それにその足と草鞋の切れ方、尋常じゃねぇな?」   利吉「…」 お菊「…」 若い男女は、二人揃って口を閉ざしたままだった…   天翔「大丈夫でござるよ。某は、ここで領民の悩みを聞いている陰陽師の天宮翔雲と申しまする。…何かあったのなら話…聞かせてくれませぬか?」   天翔は笑顔いっぱいに、優しくこう問いかけた。 利吉とお菊は、しばらく顔を見合わせてから、やっと利吉が重いその口を開いた…   利吉「実は…」 飛龍「実は…?」   利吉「実は私たち、逃げて来たんです…」 飛龍「逃げて来た?…そんで?」 天翔「もう飛龍殿!二人とも脅えているではありませぬか!…」 飛龍「ちっ…」 天翔「さぁ、話を続けて…」
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