プロローグ

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22世紀初頭から、大気汚染は地球全体の重大な問題となっていた。 多くの国や地域でこれらの環境汚染についていろいろな議論や対策がなされたが、どれも全くの徒労に終わった。 要するに、各国の政府は環境よりも経済を優先したということだ。 それは日本でも同じだった。 コンクリートの建物を腐食させ、農作物や森林、河川を汚染する酸性雨が、今日も真っ黒な雲から地上に向かって降りしきる。 やがて上空から一滴の酸性雨が日本に向かって落ちていく。 その雫は未だ日本の首都である東京へと向かっていく。 酸性雨の雫は最後に池袋へとたどり着いた。 降りしきる雨の中、駅前の広場で警官隊が若者を中心としたデモ隊と衝突している。 一発の銃声が響いた。 防護服に身を包んだひとりの警官が倒れる。 銃を手に持った、髪を銀色に染めたひとりの青年が後ろから警官に警棒で殴り倒される。 警官は無表情のまま、うつ伏せになった青年に手錠をかける。 青年は振り返ってその警官の顔を見ようとした。 空から降ってきた一滴の酸性雨が彼の目に入ったため、彼は警官の顔を見ることはできなかった。
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