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会社がある駅まであと3つ……。
アタシは必死に耐えていた。
払っても払っても男達の手はアタシのお尻から離れなかった。
しかも初めは一人だった痴漢も今では何人いるのか分からないぐらいに増えていた。
前から後ろから痴漢の触手が伸びてくる。
いつの間にかアタシの周りは痴漢だらけになっている。
も~ほんとに最悪……。
どういうわけかアタシの前に立っている女も痴漢にあっていた。
彼女もそうだったがアタシも痴漢の手を払うので精一杯で声を出す事が出来なかった。
以前、痴漢にあったというアケミの話を聞いた時アタシはこう言っていたのを覚えている……。
「そんなの大声だして腕をひねり上げてやればいいんだよ……」
そんなアタシの言葉を聞いてアケミは「絶対に無理……」と言っていた。
確かに今ならアケミの言葉に納得できる。
恥ずかしくて声を出すなんてとてもできなかった。
ましてや痴漢の腕をひねり上げるなんて絶対無理だ……。
それにしても一体何が原因なんだろう……?
外見は全く変わっていないというのに、何が男達を引き付けるんだろう……?
この異常な状況を作り出した張本人は間違いなくアタシだ。
それはこの数日の間の出来事で確証済みだ。
アタシがクシャミをすると男達は狂い始める……。
それにしても一体アタシの身体はどうなってしまったんだろう……?
このままにしておくわけにはいかない。
絶対に原因を見つけ出さなくちゃ……。
その時電車が停まり、アタシの後ろのドアが開いた。
ここは会社から二つ目の駅。
だけど、アタシは迷わず痴漢達の腕を振り払い、ドアから飛び出した。
駅に降り立った瞬間、アタシはクシャミをした。
クシュン!
たちまち世界は正常に戻った。
何人かの痴漢達も一緒に駅に降りたが、アタシがクシャミをした途端見向きもしなくなった。
まったく。
とんだ通勤パニックだ。
気がつくとアタシの前に立っていた女もこの駅で降りていた。
アタシは次の電車を待たず、歩いて会社に向かう事にした。
【続く】
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