第1話 記憶の始まり

2/4
前へ
/258ページ
次へ
第1話 記憶の始まり 1963年4月、長男であります基弘は、広島県福山市近郊の病院で産声を上げ、幼少期は府中市で過ごします。 ここから、私がお伝えする物語は始まるのです。  さあ、ゆっくりと目を開けて・・・ 1966年・基弘3歳。広島県府中市に到着。 基弘は幼少期に、府中市の市営住宅で親子3人暮らしの様子。 その市営住宅地は当時、平屋の古い木造住宅が山を切り崩した土地形状へ、まるでココアケーキにコゲ茶色のトッピング。お菓子のおうちが、幾つも並んだように隊列を組み立ち並ぶ景観で、とてものどかで素敵な町並み。 その、のどかという言葉がピッタリの家並みの中、二分するように舗装されていない急な坂を、いつもハアハアと丘へ駆け登りてっぺんから見下ろします。 すると開かれた視界が眼下に広がり、まるでパノラマ映像のように壮大で、基弘のお気に入りの散歩コース。 そんな大自然が息づく町並みの姿も、四季折々に衣装変え。 5月には甍の波を鯉のぼりが泳ぎ、12月にもなると窓から一家団欒の灯火が、白銀の世界に溢れます。 貧乏ながら友達が一杯居て、いじめや虐待もなく楽しい日々をこうして過ごしていたようです。 これから、幾つもの試練が来る事は、水先案内人の私・影法師と、この物語を手に取られているタイムトラベラーのあなた以外はだれも知らないのです。                             巷では、人間の記憶は3歳から始まると言いいます。 断片的とは言え、衝撃シーンはまるでふわりとタイムスリップしている時も、連続写真がコマ送をしているかのように、私とあなたの意識スクリーンに映し出され、照人のしつけとは言いがたい言動が繰り広げられます。 1966年・基弘、生まれて3回目、冬の日曜日。 外は北風が駆け抜けて、木枠のガラスをガツガッガツと小刻みに揺らす。うす曇の退屈な午後に事件は起きたのです。 基弘は当時歌謡曲が大好き。 さしずめ今で言うJ-POP。 特に、この年6月にリリースされた星のフラメンコが大好きで、こたつ台ステージに乗りコンセントをマイクに見立て熱唱。 歓喜も絶頂期に達すると、こたつステージから颯爽と飛び降りる遊びがマイブーム。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加