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少し緊張した様子で、蒼夜は下駄箱を開ける。
心なしか心臓の鼓動も速い。
ガチャ……
ゆっくりと慎重に開いていく。
しかし、中には室内用のシューズが入っているだけだった。
蒼夜はため息をつき
「……ラブレターの一つでも入ってろよ」
そう言いながら、肩を落として落胆し、シューズを履いた。
教室に向かうため、廊下を歩いていると、後ろから声をかけられる。
「おはよう蒼夜君」
蒼夜が振り向くと、そこには天使のように美しく微笑んでいる女性がいた。
彼女、水戸野水樹(みとの みずき)は、背は高く、顔はあまり化粧はしていないが美しく整い、艶やかな黒髪を腰に届かんばかりに伸ばしている、かわいいというよりは綺麗が似合う女性である。
そして、蒼夜の片思いの相手でもあった。
「あぁ、お、おはよう」
少し噛みながらも蒼夜は返事をする。
水樹は微笑みながら
「蒼夜君も急がないと遅刻になってしまいますよ」
そう言って、廊下を急ぎながら歩いていく。
あぁ、と生返事をしながら、蒼夜は数秒間水樹の後ろ姿に見とれていた。
あぁ、やっぱり水戸野さんはいいなぁ。そんな事を考えながら。
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