-日常・少しの違和感・意味深な視線-

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学園寮といっても学園の中に建っている訳ではなく、学園から徒歩10~15分当たりの場所に建っていた。 今の時間は7時50分、明神学園は8時までに登校しないと遅刻となってしまう。 間に合うかどうかぎりぎりの時間だ。 しかし蒼夜はさして急ぐ様子もなく、まぁぎりぎり大丈夫だろ、とだらだら歩いていた。 ふと、右を向くと電柱に何かが貼られている。 何となく気になり、立ち止まって電柱をよく見てみる。 「え~と、私のペットのエリザベスが迷子です。誰か見つけて下さい。捕まえてくださった方にはささやかながら御礼を差し上げます」 その文章の下には、フリルの付いた洋服を着た、かわいらしいチワワの写真があった。 「うわっこんな貼り紙とかホントにあるんだ。つ~かチワワにエリザベスとか大層な名前付けんなよ!」 蒼夜はそう言ってしばらくの間笑ってしまう。 そして気付いた。 「やべっ遅刻だ!くそ、こんな所で時間使っちまった。チワワめ、覚えてろ!」 罪のないチワワに捨てゼリフを吐きながら、蒼夜は学園に向かい走り去る。 それは、全身全霊を使った本気の走りだった。
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