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慌てて落としてしまったそれを隠そうとするムササビさんでしたが、ルイにはそれが何だかわかってしまいました。
「ムササビさん、それ……」
それはどんぐりの実でした。ルイの物欲しげな表情を見て、ムササビさんはばつの悪そうな顔をしました。
「ムササビさん、お願い……。僕はとてもお腹が空いてるんだ」
「ルイ……」
ルイの泣きそうになっている表情を見て、ムササビさんの心は揺れます。
でも、ムササビさんもとてもお腹が空いていたので、簡単に渡していいものか、と躊躇していました。
心の中で起きる天使と悪魔の戦い。迷ったあげく、ムササビさんはやっと答えを出します。
「ルイ。ごめんね。僕も凄くお腹が空いているんだ……」
ルイのショックは大きいものでした。いつも優しいムササビさんなら、きっと分けてくれる。そういった思いを裏切られたからです。
しかし、いつも優しくしてくれている恩を思うと、泣いてすがるわけにもいきませんでした。泣いちゃ駄目だ、と思っても、頬を一筋の光が滑り落ちます。
「うぇっ、ひっく……。お腹空いたよう……」
とうとうルイは泣き出してしまいました。
そんなルイを見て、ムササビさんはもっと心が痛みました。
「ごめんよ、本当にごめんよ」
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