第1章 邂逅。

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振り向いたときには、既に終わっていた。 五匹の魔物全ては、辺りにその血を撒き散らし、力無く横たわっていた。 青年とすれ違い、少女が振り返るまで、僅か数秒。数秒の間に、この青年は五匹もの魔物をたったの一人で斬り伏せたのだ。 少女は、自分が身震いしていることに気付く。 それが怒りによるものか、恐怖によるものなのか、少女には分からない。 ただ、一つ言えることは―― この男は、間違いなく自分より強い。 この男が、もしも血に飢えた人斬りだったら…… 沈黙。硬直。それは数秒の間だったが、少女にはとてつもなく長く感じられた。 ごくり、と唾を飲み込む。 「アンタ、名前は?」 ようやく絞り出した言葉。高圧的な態度。本来は命を助けてくれたことにまず礼を言うべきだろう。 分かっている、分かっている―― だが少女は、この正体不明の男に対して、少しでも上に立ちたかった。 (大丈夫、大丈夫……この男が不審な動きを見せたら……) ちら、と腰の杖に目をやる。そうなったら私の魔法で……!
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