無名作家のおとぎばなし

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「《夜中に寝言を言う羊》、こちらヘンゼル、ただいま[お菓子の家]方向に北上中。至急[檻車]を手配してくれ」 『《星を獲得した兎》、こちらC地区支部。了解した』 「それから付近住民をすみやかに避難させてくれ。捕獲用トリモチ銃を使用する」 『最終確認段階に入った。終了まであとおよそ15分、確認できしだい連絡する』 「了解」 ピッ ヘンゼルはオートバイのスピードを上げた。 夜風が頬に染みて、思わず顔をしかめた。 「さみー…、帰りたい」 目的地が見えた。 ヘンゼルは[お菓子の家]を通り過ぎて、標的を待つために[涙の湖]方面の道路にオートバイをとめた。 本部に頼んだ援護の[トランプの兵隊]達はすでに着いていて、ヘンゼルはその輪に加わった。 「じゃ、これからアリス捕獲を実行する。作戦は簡単、俺がアリスを引き付けるから、君達は道路の両脇に潜んで許可が出しだい一斉にトリモチ銃をぶっ放してほしい。動けないアリスをトリモチごと[檻車]で[図書館]まで運んで、今日の仕事は終了だ」 「なるほど、わかりやすいな」 「非常に明快だ」 [トランプの兵隊]達が口々に作戦を賞賛した。 「よし、それじゃ定位置についてもらう。[ジャック]は右前、[クイーン]は右後、[キング]は左前、[エース]は左後だ。俺の指示が合図だ」 [トランプの兵隊]達は頷くと、銃を持って定位置に待機した。 ヘンゼルはオートバイの無線を手に取ると、[涙の湖]の方を見た。
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