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『ハァハァ…なにも…なかったんだけどよ…疲れちまった……わりぃけど寝かせてくれ』
そう言うとゾロは腕を解き、倒れ込むようにサンジの肩に顔を埋めた。
いや、“ように”と言うよりは倒れたといった方がいいだろう。
手足はだらんと力をなくしサンジが支えていなければそのまま地面に付しているだろう。
いきなり自分と同じぐらいの体が自分にのしかかりよろけそうになったが、サンジはしっかりとその体を腕に抱いた。
力の抜けきった体は死んでしまったのではないかとそう錯覚してしまうほど冷えきっており、サンジは強くその体を抱きしめた。
まだ生きていると、ちゃんと鼓動の音が聞こえると…
『ゾロ……』
小さく名前を呼びながら血の気の引いたゾロのいつもとは明らかに違う寝顔を見つめながら、背に響く歓声の声に怒鳴りたくなった。
“全員が無事ではない”と、ルフィを守るために、ここにいる全ての命を守る為に、犠牲になったモノがいるんだと。
そんな説教をする資格は同じ様に守られたおれには出来ないけどと、ドサリと音を立てて座り込みサンジはゾロの頭に唇を寄せてからその頭に顔を埋めた
『…ここで何があった?何をされたんだ?お前は……ゾロ……』
ギリッと歯を食いしばりながらサンジは涙を零す。
悔しくてたまらない…
やがて口の端から血が流れゾロの腕へと落ちたがその血はゾロのモノと混ざり合いどちらのものともわからなくなっていく
ドクドクと響くゾロの鼓動の音を聞きながらおれは何をやっているんだと、
こいつはこんなになってまで一味を守ったと言うのに、おれは何も出来なかったと…守ろうとした存在に逆に護られたのだと………
だが…死んでいたかもしれない。連れて行かれていたかもしれなかった存在が瀕死の状態ではあるものの、今、生きてこの腕の中で細い息でもし続けている事に安心してしまう自分もいる。
悔しくて悲しくて、でも生きていてくれた事が嬉しくて……
『ゾロ……ゾロ……良かった……良かった……生きていて…生きててくれて……』
止まらない涙を流しながら、サンジは自分の中の感情が収まるまでそこでゾロの鼓動の音を聞きながら抱きしめていた。
何も出来なかった自分にとって、ゾロが死んでしまうかもしれないと、そばから消えてしまうかもしれないと思いながら意識を手放してしまった自分にとってその鼓動の音は何よりも安心出来るものだった。
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