「大嫌いだった友達」

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中学時代に大嫌いな男子がいた。 何時も何時も喧嘩を吹っ掛けてくる様な嫌な奴。 何時も身体が弱いと言う理由で体育を休んでいた。 何でも心臓が悪いとか…噂は聞いた。 皆に「ゼンマイで動いてる」とか言われて嫌われてたあいつ。 陽に当たってない肌は青白い感じだった。 ††† 大人になってから、偶然帰り道で彼に会った。 彼はあんまり変わってなかった。 何だか彼は私と再会した事を喜んでいた。 何だか馴れ馴れしく話しかけてきて、家の近くまで一緒に来た。 「お前にお願いあるんや。」 それは同じ病気の女の子の相談に乗ってやって欲しいって事。 電話番号を受け取りながら私は 「でも忙しいけん、あんまりかけられんかもしれんよ?」 と言った。それは嘘抜きの本音だった。 「嫌、受け取ってくれただけでも嬉しんよ。」 彼とそう言って別れた。 ††† 私は電話をかける暇もなく…暫く月日は過ぎた頃、中学時代の親友と偶然会い、その時の話しをした。 「そういやこないだあいつと会ったんや。家反対やのにの。何やったんやろ。」 「…あいつ…こないだ死んだよ。」 「えっ…?…」 「あいつ心臓悪くて二十歳までしか生きれんて医者に言われてたらしいわ。」 「………」 ††† 余命を遥かに過ぎたあの日… あんなにキツイ山道を歩いて… …私には最期の思い出になってしまった。 さぞ辛かっただろうに、彼の最期の顔は、頬を赤く染めた満足そうな笑顔だった。 ††† 「あんたはあいつをあの頃、病気やからって腫れ物を触る様に扱ったり、虐めたりせんと、普通に接しとったけん、相談したんちゃうかな?あいつ的には…再会しても普通やったん嬉しかったんちゃう?」 親友は同じ小学校だから知ってたらしい。 私は…知らなかった。 病気がそんなに深刻だなんて…思いもしなかった。 けれど…知ってたら…あんな風に接する事が出来ただろうか。 多分出来なかったと思う。 …夭折。 若い頃憧れるものは余りにも辛過ぎるものだった。 彼は私の前で精一杯「生」き、そして「死」んだ。 †††
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