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私の人生初めて対面した「死」は父方の祖父の「死」だった。
まだ私は三歳だった。
半年に一度は帰る父の実家の二階の座敷に祖父は「死」んで寝かされていた。
皆、まだ早い祖父の「死」に鎮痛な面持ちだった。
私は違った。
まるで眠っている様に安らかな表情の祖父からは私は「死」を感じられなかった。
「何で動かないんだろう?」
内心思った事。
そうして私は何処からか持ち出したマジックで、祖父の足元にある押し入れの襖に絵を描き始めた。
そうして祖母に厳しく叱られた。
けれど周りの大人達は「まだ子供なんだから」と私を庇った。
†††
襖に描かれたのは不思議な…奇妙な絵だった。
あの場にいた大人の誰もが何かを感じる絵、だっただろう。
私もハッキリ覚えている。
何人かの人々が大きな階段を昇って行く。
背景には雲。
空に続く階段を昇って行く人々。
あの時、私の手を滑らせていった力は何だったのだろう。
それは今も解らない。
けれど…幼い私には見えていたのかもしれない。
空に続く階段を昇って行く人々達。
空に還っていく「命」を。
†††
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