怒り

2/11
前へ
/426ページ
次へ
――金曜日。 時間は午後5時頃。 あたしは、ユミと駅の前に立っていた。 「彼氏、ここから四つ先にある駅の近くで働いてるんだ。 沙夜、本当についてきてもらっていいの…?」 不安げな表情を浮かべるユミの背中を、あたしはかるく叩いた。 「当たり前じゃん!いまさら遠慮なんかする仲じゃないでしょっ♪ ユミのためならお安い御用だよっ」 そう言って、ユミに向かってウインクをする。 「あははっ♪そっか! さすが沙夜♪♪」 そう言って笑うユミ。 でも、笑顔が少しだけ引き攣っている。 あたしは、そんなユミの手をギュッとにぎりしめた。 「大丈夫…。 ユミは一人じゃないよ? あたしが隣にいるからね」 微笑みながらそう言うと、 ユミは涙声で答えた。 「…ありがとう」 ―ガタンガタン… 揺れる電車の中、 あたし達は何も喋らなかった。 特に何かを考えてたわけでもなく、あたしはただボーッとしていた。 「…ここの駅だよ。降りよ」 「あ、うん」 いつの間にか目的の駅に着き、あたしはユミと一緒に電車から降りる。 早めの速度で前を歩くユミの後ろを、見失わないようについていった。 .
/426ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1117人が本棚に入れています
本棚に追加