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――金曜日。
時間は午後5時頃。
あたしは、ユミと駅の前に立っていた。
「彼氏、ここから四つ先にある駅の近くで働いてるんだ。
沙夜、本当についてきてもらっていいの…?」
不安げな表情を浮かべるユミの背中を、あたしはかるく叩いた。
「当たり前じゃん!いまさら遠慮なんかする仲じゃないでしょっ♪
ユミのためならお安い御用だよっ」
そう言って、ユミに向かってウインクをする。
「あははっ♪そっか!
さすが沙夜♪♪」
そう言って笑うユミ。
でも、笑顔が少しだけ引き攣っている。
あたしは、そんなユミの手をギュッとにぎりしめた。
「大丈夫…。
ユミは一人じゃないよ?
あたしが隣にいるからね」
微笑みながらそう言うと、
ユミは涙声で答えた。
「…ありがとう」
―ガタンガタン…
揺れる電車の中、
あたし達は何も喋らなかった。
特に何かを考えてたわけでもなく、あたしはただボーッとしていた。
「…ここの駅だよ。降りよ」
「あ、うん」
いつの間にか目的の駅に着き、あたしはユミと一緒に電車から降りる。
早めの速度で前を歩くユミの後ろを、見失わないようについていった。
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