友達の存在

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「でも証拠を突き付けなきゃ、向こうだって認めないんじゃないかな…」 泣きじゃくるユミの背中をさすりながら、あたしは静かに言った。 そんなあたしの言葉に、 ユミは少し考え込んでから顔を上げた。 「そういえば…前までは金曜日には必ず会ってたのに、最近は会ってくれなくなった。 その日に限って携帯の電源も切ってるし…もしかしたら…」 ユミのそんな言葉に、 あたしは眉間にしわを寄せる。 もしも…もしもユミの彼氏が浮気をしていたとしたら… 金曜日にその浮気相手と会っているかもしれない。 その可能性は、ゼロじゃない。 ユミの顔を見ると、不安そうに少し顔を歪めている。 きっと、あたしと同じことを考えているのだろう…。 「…沙夜」 「ん?」 「…次の金曜日あいてないかな?」 いきなりのユミの言葉に、 あたしは首を傾げる。 そんなあたしに、ユミは何かを決意したような表情で言った。 「金曜日…仕事の後の彼氏を尾行したい。沙夜にもついてきてほしいんだけど…ダメ?」 「えっ…」 少し驚いてユミを見ると、 ユミの肩は少し震えていた。 そうだ…。 今、1番不安なのはユミなんだ。 あたしが戸惑ってる場合じゃない。 「…わかった。あたしなんかでいいなら、なんでもするよ」 ユミの手を力強く握って、あたしは答えた。 そんなあたしの言葉を聞いて、 ユミは安心したように顔を緩めた。 .
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