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『今回の転送装置はどれじゃ~?』
ラキアがあたりをキョロキョロ見回して言う。
ロードの居場所には、この部屋の何処かに仕掛けてある転送装置でしか行けない。
行った先だってそこが何処であるかはわからない。
ロードの居場所は俺達血髪一族の間でもトップシークレットなのだ。
「これです。では、いつものように…」
影武者の男は机の上にある花瓶を指して言った。
俺達は机の方に近付いて、その花瓶に触れた。
そしてそっと目を閉じる。
フッと体が浮くように感じた。
急にブワッとした威圧感に苛まれる。
恐る恐る目を開けば、そこは先程の部屋とは全然違う部屋だった。
木造の、何の変哲もないボロい部屋。壁も床も木のめがむき出しだった。
真ん中にポツンと椅子置いてあるだけ。
そこには、にっこりと笑い、柔和そうな顔をした中年の男が座っていた。
「やぁ、よく来たなフォングス。そしてラキア」
普通の者なら、先程の男の方が余程暗殺者のまとめ役らしいと言うのだろう。
しかし、俺達同業者なら必ず感じる。
その紛れもない格の違いを。
纏う空気の違いを。
その男の血色の髪は、メラメラと燃えているように見えた…。
「少し遅いんじゃないのか?」
男…ロードが笑ったままこちらを見て言った。
しかしそこから溢れでる威圧感は全く変わらないままだ。
俺は一筋の汗が額に流れるのを感じた。
「…申し訳ありませんでした。シャーキ様」
片膝を地につけ頭を下げて、俺は慌ててそう言った。
『これシャーキ。あまり我が息子フォングスをいじめるでない』
ラキアが俺の前にフワリとでてきて助け船を出す。
…普段はくそムカつくじじいだがこの時ばかりは感謝した。
「【最高の暗殺者-アサッシスト-】がこんな事でめげててどうする」
『…フォングスはいくら場数を踏んでるとは言え、まだ齢15歳の少年じゃぞ?』
フッと禍々しい威圧感が消えた。
「…今日の所はラキアに免じて許してやろう」
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