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『……グス!』
その長い黒髪をなびかせて、俺は木の上で遠くを見つめながら初めて人を殺した時の事を思い出していた。
もしかしたら感傷に浸っていたのかもしれない。
『フォングス!!』
「…なんだ、じじい」
フワリと風に乗って、体を光輝かせた見た目青年が俺の目の前に現れた。
『じじいとはなんじゃ…。お主ワシにそんな口を聞いて良いと思っとるのか?』
宙に浮いたまま青年は言った。
彼は不思議な色をしていた。髪も瞳も肌もその指についた爪さえも金色だった。
実際には金色という描写は正しくない。彼は全身が、その存在が輝いているのだ。
『こんな美青年をつかまえて酷いのぅ…』
その声も不思議と輝いているように感じた。
…しかしそんな輝きも俺には不快でしかない。
「…何が美青年だじじい!見た目はどうだか知らんが中身はそうとうなじじいだろうが…」
『だからといってじじいと言う事なかろう?ラキア様と呼ばんか!』
「…今さら何言ってやがる。気持ち悪い」
青年…ラキアと話していると非常に疲れる。俺は深いため息をついた。
「不快だ。用がないならアッチ行けよ」
『用ならあるぞえ?』
…ならさっさと言いやがれ!
と叫ぶのを我慢した俺はなかなか偉いのではないだろうか…
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