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「さっ。こちらへ」
言いながら腹心は突き当たりの壁に手を当てた。
するとどうだ。
ただの壁だったそこはギギッと扉のように開いた。
俺はその先の部屋に足を踏み入れた。
そこはとてつもなく豪華な部屋だった。とても広い部屋に高そうな絨毯がひかれていた。
その上にある大きな机。赤く目立つ椅子に、その男は座っていた。
「よく来たな…」
低い声でその男は呟いた。
「…いいから早くしろ。こんな事している場合じゃないだろ。俺は暇じゃないんだ!」
俺はキッとその男を睨み付けてそう言った。
「…お前が遅いのが悪いのだろう?」
ニヤッと嫌な笑みを浮かべて男が言った。
「俺が悪いんじゃない。じじいが呼びにくるのが遅かっただけだ」
『ワシのせいにするでない、フォングス。…まぁフォングスの言うことも一理ある。ワシも暇ではないのでのぅ…早くしてくれんか?』
「……ラキア様が言うのですからしかたがありませんね…」
急にその男は態度を変えて、椅子から立ち上がった。
そう、この男はロードではない。いわゆる影武者だ。
なんでいちいちロードに会うために毎回こんな面倒な事をしなければならないのか…。俺は深い溜息をついた。
まぁ、職業柄しょうがないのかもしれないが。
たくさんの敵をつくり、たくさんの罪を背負っている男だ。
…こうでもしないと奴も怖いのかもしれないな…。
俺はひっそりと嘲笑った。
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