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ミッドチルダの市街地。その街の一端に一つの家がある。
なんの変哲もない極々普通の家だが、知る人ぞ知る人物の住む家だ。
表札にはミッドには珍しい漢字で『高町』の二文字。
その家の二階の一室、大半がピンクで埋め尽くされた可愛らしい部屋。そこのベッドで眠る姿がある。10歳くらいの少女だ。
規則的な寝息を立て起きる気配はない、そこに控え目に二回のノック音が響いた。
熟睡している少女はピクリとも反応しない。
次にまた二回、今度は先程よりいくらか強いノック音だったが、少女は起きない。
更にノック音が鳴る、今度は拳で叩いたかのような大音だ。
しかし少女は起きない。ノックの主は痺れを切らしたのか諦めてそっと入ってくる。
腰に届かない程度の長い金髪の15歳くらいの少女だ。
「いのりー、起きてる~~……わけないよね」
いのり、そう呼ばれた本人は未だにベッドの中で熟睡中だ。
「どんな寝方すればこうなるんだろう……?」
入ってきた少女は、いのりの毛布を器用に抱き枕にして眠っている姿に少し頭を捻ったが、こんなことしてる場合ではないて思い直し、起こしにかかる。
「いのり、朝だよ~」
体を揺さぶってみる、反応は薄い。
「まっぶしい朝だよー!」
カーテンを開け放ち日光を取り入れるも眩しがって毛布の中に入ってしまった。
「どうしたものかな……」
ここまできたら最後の手段しかないと決め、耳に口を近づけ呟いた。
「スターライト~ブレイカー…」
「それだけはやめてぇぇぇ!!」
飛び起きた。それもなぜかボクシングの構えで。
「おはよっ、いのり」
「あ、おはようヴィヴィオ姉さん。スターライトブレイカーは?」
ヴィヴィオと呼ばれた少女は口に右手の人差し指を当て、
「嘘だよ。う、そ」
なんだぁ、といのりは心底安心したという顔になり、また毛布の中に戻ろうとする。
「でも朝ご飯出来てるから早く降りてこないと本当に撃たれるかもね」
「行きます! 即座に着替えて行かせていただきます!」
待ってるよ~、と言い残しヴィヴィオは部屋を出て行く。
いのりは少しボーっとした後気合いを入れて立ち上がり、
「さて、今日も一日みんなと頑張ろ!」
と伸びをしてから着替えを始めるのだった。
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