Ⅱ.首切り王子と狂食魔

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  昔々、あるところに可愛いウサギと、それよりも小さな動物達が居た。 真っ赤な瞳に茶色がかった毛皮を持つ他のウサギとは違い、其のウサギは白銀の毛皮に蒼色の瞳をしていた。 ウサギは言った。   「私はこの世界で一番強い存在なのだ。」   実際にウサギは強かった。ウサギだけではなく、他の動物達の王を務めた。   草食動物であるウサギは当然、草を食べる。だが、其のウサギは肉を食べた。草だけではなく、肉を食べたら強くなれると信じていたのだ。   そんなある日、ウサギの前にヘビが現れた。ヘビは強かった。ヘビは長い体を使い、長い舌を伸ばしてウサギを捕まえた。   「愚かだな、草食動物の王よ。お前は所詮、か弱いウサギ。我の力の前にひれ伏すがいい!」   ウサギは負けたくなかった。自分こそが一番強いと思っていたからだ。   「我はなァ、この前トラの奴を噛んで殺してやった。立派な体のトラでも、我の毒の前では簡単に倒れるのだ!どうだ?怖いだろう?」   トラとは何だ?ウサギはぼんやりと考えた。ウサギはトラを知らなかった。ウサギは小さな小さな世界に住んでいたのだ。そこではウサギが一番大きいし、白銀の毛皮が一番綺麗だった。   「黙れ…!私が強い、私が一番強いんだ!」   ウサギは抵抗した。だが、圧倒的な力に屈した。その殺那、大きな『影』が二人を覆った。   「…ヒッ!」   ヘビは小さな、短い悲鳴を上げた。『影』はあっという間にヘビに飛び掛かり、大きな牙でヘビを噛み砕いてしまった。ウサギは呆然として『影』を見上げた。   「大丈夫だったかい?」   『影』はウサギに話し掛けた。   「お前は誰だ。」   ウサギは聞いた。   「僕はライオンです。愛するトラをヘビに殺されたので、ヘビを殺しに来たのです。」   ライオンと名乗った『影』は私をくわえて持ち上げた。   「離せ!…私を食べる気か?」   ウサギは途端に臆病者になった。自分より大きなものに、心の底から恐れを抱いたのだ。そんなウサギにライオンは言った。   「僕は君には興味が無いよ。」   そう言ってウサギを離してくれた。    
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