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昔々、あるところに可愛いウサギと、それよりも小さな動物達が居た。
真っ赤な瞳に茶色がかった毛皮を持つ他のウサギとは違い、其のウサギは白銀の毛皮に蒼色の瞳をしていた。
ウサギは言った。
「私はこの世界で一番強い存在なのだ。」
実際にウサギは強かった。ウサギだけではなく、他の動物達の王を務めた。
草食動物であるウサギは当然、草を食べる。だが、其のウサギは肉を食べた。草だけではなく、肉を食べたら強くなれると信じていたのだ。
そんなある日、ウサギの前にヘビが現れた。ヘビは強かった。ヘビは長い体を使い、長い舌を伸ばしてウサギを捕まえた。
「愚かだな、草食動物の王よ。お前は所詮、か弱いウサギ。我の力の前にひれ伏すがいい!」
ウサギは負けたくなかった。自分こそが一番強いと思っていたからだ。
「我はなァ、この前トラの奴を噛んで殺してやった。立派な体のトラでも、我の毒の前では簡単に倒れるのだ!どうだ?怖いだろう?」
トラとは何だ?ウサギはぼんやりと考えた。ウサギはトラを知らなかった。ウサギは小さな小さな世界に住んでいたのだ。そこではウサギが一番大きいし、白銀の毛皮が一番綺麗だった。
「黙れ…!私が強い、私が一番強いんだ!」
ウサギは抵抗した。だが、圧倒的な力に屈した。その殺那、大きな『影』が二人を覆った。
「…ヒッ!」
ヘビは小さな、短い悲鳴を上げた。『影』はあっという間にヘビに飛び掛かり、大きな牙でヘビを噛み砕いてしまった。ウサギは呆然として『影』を見上げた。
「大丈夫だったかい?」
『影』はウサギに話し掛けた。
「お前は誰だ。」
ウサギは聞いた。
「僕はライオンです。愛するトラをヘビに殺されたので、ヘビを殺しに来たのです。」
ライオンと名乗った『影』は私をくわえて持ち上げた。
「離せ!…私を食べる気か?」
ウサギは途端に臆病者になった。自分より大きなものに、心の底から恐れを抱いたのだ。そんなウサギにライオンは言った。
「僕は君には興味が無いよ。」
そう言ってウサギを離してくれた。
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