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「『薔薇姫』のお話、私も知ってるわ。」
青い青い空は世界を見下ろしている。そよ風は優しく頬を撫でて、日光が暖かくて気持ちの良い日だった。
「アンリエッタが好きそうな話だと思った。」
衣服や髪飾りのレースが風に揺れていた。私はいつも思う。今日のアシュリーも可愛い、と。
「だってだって、憧れじゃない?いつまでも一緒だなんて。」
アシュリーの髪は綺麗な真紅。きっと薔薇姫にも負けず劣らず美しい顔立ちなのよ。鼻筋は通っていて、唇は薄く、クールな顔立ち。
「この話って誰が広めたの?こんな小さな村だから…旅人から誰かが聞かされたのかしら。」
「知らない。そんなのどうでも良いじゃない。私はアシュリーと毎日をのんびり過ごせたらそれで幸せなんだもの。」
私はそう言って無理矢理話を止め、彼女を抱き締めた。あぁ、彼女の綺麗な髪。真っ赤な髪…良い香り。瞳も唇も真っ赤で素敵。
私の背中に彼女の細い腕が回る。ドキドキする。綺麗なアシュリー…。
アシュリーはいつも車椅子で移動をしている。彼女は生まれつき足が悪かった。でも、今度手術をする事になったの。
「アシュリー、これあげる。」
私は白い薔薇を取り出して彼女に手渡した。
「綺麗な薔薇をまたくれるのね?」
「嫌?」
「ううん、アンリエッタの薔薇は棘が無いし…綺麗だから大好きよ。」
「良かった。アシュリー、足が良くなったら…その、一緒に教会見に行かない?」
「あら。もしかしてプロポーズ?」
「や、その…えと、あうぅ……。」
「ふふ、喜んでお受け致しますわ。」
アシュリーは真っ赤な顔をした私の目の前で微笑んだ。可愛い。可愛過ぎるわ。世界中の人に言いたい。良いこと?アシュリーはこのアンリエッタのものなんだから!って。
小さな頃から足の悪いアシュリーの傍に居たのは私。毎日毎日遊んでる。今もずっとそうなの。いつの間にか、お互いになくてはならない存在になっていた。
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