Ⅰ.薔薇姫様とアンリエッタ

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  「『薔薇姫』のお話、私も知ってるわ。」   青い青い空は世界を見下ろしている。そよ風は優しく頬を撫でて、日光が暖かくて気持ちの良い日だった。   「アンリエッタが好きそうな話だと思った。」   衣服や髪飾りのレースが風に揺れていた。私はいつも思う。今日のアシュリーも可愛い、と。   「だってだって、憧れじゃない?いつまでも一緒だなんて。」   アシュリーの髪は綺麗な真紅。きっと薔薇姫にも負けず劣らず美しい顔立ちなのよ。鼻筋は通っていて、唇は薄く、クールな顔立ち。   「この話って誰が広めたの?こんな小さな村だから…旅人から誰かが聞かされたのかしら。」 「知らない。そんなのどうでも良いじゃない。私はアシュリーと毎日をのんびり過ごせたらそれで幸せなんだもの。」   私はそう言って無理矢理話を止め、彼女を抱き締めた。あぁ、彼女の綺麗な髪。真っ赤な髪…良い香り。瞳も唇も真っ赤で素敵。 私の背中に彼女の細い腕が回る。ドキドキする。綺麗なアシュリー…。 アシュリーはいつも車椅子で移動をしている。彼女は生まれつき足が悪かった。でも、今度手術をする事になったの。   「アシュリー、これあげる。」   私は白い薔薇を取り出して彼女に手渡した。   「綺麗な薔薇をまたくれるのね?」 「嫌?」 「ううん、アンリエッタの薔薇は棘が無いし…綺麗だから大好きよ。」 「良かった。アシュリー、足が良くなったら…その、一緒に教会見に行かない?」 「あら。もしかしてプロポーズ?」 「や、その…えと、あうぅ……。」 「ふふ、喜んでお受け致しますわ。」   アシュリーは真っ赤な顔をした私の目の前で微笑んだ。可愛い。可愛過ぎるわ。世界中の人に言いたい。良いこと?アシュリーはこのアンリエッタのものなんだから!って。 小さな頃から足の悪いアシュリーの傍に居たのは私。毎日毎日遊んでる。今もずっとそうなの。いつの間にか、お互いになくてはならない存在になっていた。    
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