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「アンリ様、ご機嫌麗しゅう…」
邪魔者が来た。私とアシュリーの大切な甘美な一時を邪魔する人。
「挨拶は要らないわ。さっさと帰って頂戴。」
「アンリエッタ、何もそこまで…。」
アシュリーが私の腕を掴んで左右に首を振った。その仕草に私は頬を膨らませて冷たく言い放った。
「男は嫌い!私やアシュリーに近寄らないで!」
男性は私のお見合い相手。私、アンリエッタは一応村一番の富豪で有名だ。そのせいで色々なトコから声が掛かる。渋々帰る男性を睨み付けては人差し指を立てて彼女に注意をした。
「アシュリーも気を付けてね?あ、でも大丈夫よ。アシュリーは私が守るんだから。」
「そう。ありがとう、アンリエッタ。」
私の綺麗に巻かれた金色の長い髪に彼女の指が触れる。私は空色の瞳を泳がせ彼女の動作を見つめた。胸がはち切れそう…。どうしてアシュリーはこんなに可愛いの?愛しい、愛し過ぎる。もしかしたら…薔薇姫の傍に居た人もこんな気持ちで薔薇姫を見ていたのかもしれない。そして、薔薇姫も…。
薔薇の庭園でいつも茶会を開いたと言う薔薇姫。愛しい少女に毎日真っ赤な薔薇をプレゼントしていたらしい。
「アシュリー…私達、ずっと一緒よ?ずっとずっと…私が守ってあげる。」
「アンリ…嬉しい、ありがとう。私の可愛いお姫様。」
………ポンッ。と私の頭から湯気が出た気がした。お、おひ…ッ、お姫様…!?
「わ、わた…わたわた…!私はお姫様なんかじゃ…!」
「ふふ、でも…いつも村中の女の子が貴女に憧れの視線を向けてるわ。」
「そう…なの?」
「…うん。」
「でも、安心して。私の好きな人はアシュリーだけなんだから!」
「本当に?…私だけを、愛してね?」
「も!…もち、ろん!」
可愛い!アシュリーの微笑みを向けられるだけで、もう顔がニヤけちゃう。ずっとずっとこんな時間が来れば良いのに……。
でも、世の中は非情だ。そんな時間は永遠に続くワケがなかった。
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