960人が本棚に入れています
本棚に追加
刀弥様が自室に戻ったのを確認した後、私はくしゃくしゃになってしまった封筒を開いた。
私は封筒を睨みながら、内容を確認する。
任務の内容は、なんということはない。
無許可でこの世界に来た二人の紅種の捕縛だった。
だが私はこの依頼書を見て思った。
最後にこのような…
文書には、紅種二人がこの世界に来た推測が書かれていた。
二人は結婚を約束した。…だが二人の両親が共に結婚を反対。二人は共に位の高い家の出らしく、さらに最悪なことに、両家は犬猿の仲。意を決して、家を出て、裏のブローカーに多額の金銭を渡し、この世界へ。
ここまで読むと幸せを勝ち取ったロミオとジュリエットに見える。
だがここからが現実の悲惨さだ。
ブローカーが両家に情報を売り、二人の逃亡先がこの世界だと判明。
結果、両家の要請で冥府から互いに違法者として烙印を捺され、対特がその任を受ける。
「腐った任務です」
思わず漏れた言葉。
対特は基本的に冥府からの要求を拒否できない。
その為、こちらが不服に思っても、嫌々引き受けるしかないのが現状だ。
文を読み続ける。
対象の二人を本日、この街に入ったらしい。
当然、偶然ではない。対特が情報を操作し、安全な場所だと思いこませた結果である
。
捕縛開始は今日の深夜、所定の場所まで、他の局員が追い込み、私が捕縛。
捕縛は基本、狩るものが行う。それは、違法者に対して、狩るものの存在を強く見せることと、冥府に対特が如何に優秀な局員を有しているか見せるため。
私は封筒と中身を細かく破り、ゴミと一緒に捨てる。
最後に来た任務は最低で、主を、刀弥様を騙し続ける私にはお似合いの任務だった。
最初のコメントを投稿しよう!