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夜空に無数の弧を描き、光の矢が降り注ぐ。
「ぐわぁぁぁ!?」
辺りに響き渡る悲鳴に、私は静かに息を吐いた。
私は香坂神楽。
現、対異種特殊捕縛協会、通称『対特』の狩るもの「沈黙人形」と呼ばれる戦闘員です。
紅種、この世ならざる冥府より来る隣人。彼らは特殊な能力を持ち、本来は正式な手続きでこちらに来るのを、違法に入界、もしくは犯罪を犯した者を捕縛するのが、私のような狩るものの仕事である。
ドサッと雄叫びを上げていた男が意識を失い、そのまま地面に倒れる。
「ふぅ」
再度、息を吐き、左手で輝く弓『月光弓』解除する。
そう、私は紅種、同族を狩るもの。
正確には紅種の母と人間の父のハーフですが、紅種が紅種を狩るという意味では差異はない。
「目標は沈黙、回収班と処理班の手配を」
トランシーバーで近くで待機しているオペレーターに連絡する。
数秒後、ピピっと向こうからの返事。
『お疲れ…』
私以上に口数の少ない女性オペレーター。
「今日はこれで終わりですか?」
『はい…』
彼女との付き合いは長い。
私は生まれてすぐ両親と死別。
施設から対特に引き取られたのが四歳。六歳で戦場に立ってからの付き合いですから、かれこれ十年近い付き合いになる。
そして、彼女とこうして話すのも今日が最後。
向こうのスイッチが入っているのを確認。一瞬の戸惑いとほろ苦さがこみ上げてくる。
「加奈子…私は対特を辞めます」
トランシーバーの向こう、沈黙。
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