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あの時の刀弥様を考えれば、今の刀弥様は奇跡に等しい回復です。
私がそんなことを考えていると、
「神楽さん! 火!火!?」
慌ててシチューを煮る為のガスコンロを閉める。
「誠に申し訳ありません!」
深々と頭を下げる。本当ならこの場で切腹したいほどだ。
鍋の中のシチューは煮すぎた為に、焦げた匂いが中に充満し、底にあったジャガイモや人参に黒い焦げ目が付いていた。
「い、いいよ! それよりも神楽さんは大丈夫?」
余りの優しさに涙が出そうになる。
「だっ大丈夫でございます。すぐに変えの料理を熱ッ!?」
素手で鍋の取っ手を持ってしまい、手のひらに軽い火傷ができた。
「神楽さん!?」
私の手を取り、火傷の跡を見て、悲しい表情をされる刀弥様。
「だっ大丈夫です!ですから!?」
マズい!
顔が熱い。
今の私はきっと茹でった蛸のように真っ赤になっていることだろう。
「駄目だよ! すぐに冷やさないと!?」
そう言い、流し場の蛇口を捻る。
私の手を引き、水の中にくべらせる。
水に触れて、手の熱が下がるとは逆に顔の温度は急上昇中。
そもそも紅種との混血である私は、身体治癒能力が人とは違う。
この程度の火傷なら五分とかからず全快する。
だが、嬉しかった。
刀弥様の優しさが…。
「本当に大丈夫? 病院行く?」
潤ませた瞳で見上げる刀弥様。
可愛い過ぎです!
心の叫びが漏れそうになるのを必死に堪えた。
「だっ大丈夫です。ほら跡ももうこんなに薄いですから」
すでに治りかけの手を見せる。
「そう…良かった~」
安堵の表情の刀弥様。
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