第一話

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ピンポーン、とチャイムの鐘が鳴る。 玄関に誰かが来たらしい。 「私が出ますので」 刀弥様にそのようなことをさせられないのは勿論、これでも私は敵が多い。 狩るものの宿命というか因果応報というか、昼夜問わず、私に復讐を試みる輩は少なくない。 特に今日は刀弥様が居る。万が一にも刀弥様を巻き込んでしまえば一生、私は後悔する。 「…どなたでしょうか?」 扉を開けず尋ねる。細心の注意と警戒。 そしてその警戒はある意味正しかった。 「井徳運輸局の者です。封筒をお届けに上がりました」 井徳運輸局は対特のダミー会社。そこからの手紙は冥府からの依頼書である。 扉を開ける。誰もいない。ただ一通の封筒だけが郵便受けに投函されていた。 (私の最後の仕事…) 前々から決めていた。刀弥様が中学を卒業したら辞める、と。 私は封筒をエプロンの中に隠し、ダミーの封筒を取り出す。 「誰だったの?」 卒業証書を眺めていた刀弥様に尋ねられる。 「変な宗教の勧誘でした。話しを聞くのも馬鹿らしいのですぐに追い返しました」 「こんな山奥まで来るなんて熱心な勧誘だね」 一瞬ドキッとする。探りを入れられたと思った。 だがすぐにその思考を捨てる。 刀弥様は人を疑うということを知らないというか、無垢というか…つまり今のも本心から相手を気遣っての言葉だ。 「そうですね。しかしあのような勧誘は改心して止めて頂きたいです」 「はは…」 刀弥様の笑顔を見ながら、私は隠した封筒を握り潰した。
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