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今年の春から真結も高校生だ。
どこの高校に進学するのだろう。
定かではないが、取り敢えず俺が名前も知らぬ、異郷の地であることは推測できた。
そう思えば、俺たちは若い。
まだ人生経験もろくに積んでいない子どもで、だが、俺には真結しかいない気がした。
運命なんて陳腐でありきたりな言葉で片付けたくはない。
しかしそれ以外に、的を射ている表現を俺は知らなかった。
一一I want to be near You
よく真結が唄っていた歌が、脳内でリピート再生される。
あの頃は、歌詞の意味なんか全く考えなかった。
そういえば、最後の日も真結はこの歌を唄っていた。
もしかしたら、それは別れたくないと、真結なりの、ささやかな最後の抵抗だったのかもしれない。
そう考えてしまう俺は、楽観主義なんだな、と思う。
I want to be near You
もし願いが叶うなら、君の隣で、ずっと一緒に笑っていたい。
もうそんなこと、俺には叶うことのない望みなのだと悟った。
『……ケ? ……ス、ケ? ダイ……ケ……ダイスケ?』
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