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一回戦、清心対明新。
九回表、ツーアウト、明新の攻撃、9対4、清心リード。
カウントは1ストライク3ボール。
思いきり投げられたボールに明新の一番バッターがバットを振った。
快音が響く。ボールはライト方向に高く伸びていく。
やがてボールは上昇を止め、アーチを描いて落ちていく。
清心の部員達は焦ったが、そのボールの落下点はスタンドではなくライトだった。
ライトの選手はなぜか不満そうにグローブを出し、フライをキャッチした。
沸き上がる歓声とため息。
キャッチャーの涼介はマウンドに駆け寄っていく。
「ナイスピッチだったぞ。よくやった」
その涼介の言葉をどこか照れ臭そうに聞いて笑顔で答える。
「いやー……まぁ、金井様にかかればこんなもんよ!」
マウンド上に立っていたのは金井だった。
その頃、清心のエースはライトで不満のオーラを隠さずに周囲に出していた。
昨日、オーダー発表の時、先発を言い渡されたのは金井だった。
悠は実力が拮抗してくる相手まで使わないらしい。
あまり悠の実力を見せたくないという事だ。
なのでトーナメント表で言えば、三回戦まで悠はピンチ以外ではマウンドに登らない予定だったのだ。
そういう事から悠は投球機会が無かったので、普段やる事の無いライトで不満を爆発させていた。
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