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夕焼けの色が空にキレイに映っている。
みんなが帰り始めた公園では、一組の親子がキャッチボールをしていた。
「えぃっ!」
小さな子供が父親らしき男性に向かってボールを投げる。
「おっ!ナイスボールだぞ悠!これなら野球選手も夢じゃないなぁ」
父親は子供にボールを優しく投げ返した。
ボールを受け取った子供は「やったぁ!」と、とても嬉しそうにはしゃいでいる。
「さてと……そろそろ帰んないとな」
日はすでに暮れていた。
「えー……?じゃあ!また今度しようね!」
子供の無邪気な約束に父親はうつむいてしまう。
「……すまんな悠、父さんちょっと遠くに行ってしまう事になってしまってな」
父親は子供の顔を見ながら言った。
「お前たちに会いに来るのも今日で最後なんだ」
「じゃあ、もう会えないの……?」
父親は子供の不安な顔を吹き飛ばすように、大きな手で乱暴に頭を撫でて言う。
「そんな事はないぞ!悠がもっと大きくなって、もっとすごいボールを投げれるようになったら、父さんに会えるぞ!」
父親は笑顔だった。
「本当……?」
「本当だ!」
父親はまた乱暴に頭を撫でる。
「じゃあボク、もっと野球の練習してすごいボール投げれるようになる!」
子供の目は青空のように澄んでいた。
そして、熱い夏がやってくる。
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