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悠は熱がないと知って今度は歓喜で暴れている水野落ち着かせながら、金井の姿を眺めた。
「俺が来たのは……お前らに言わなきゃならない台詞があったからだ」
「なんだそりゃ?」
悠は首を傾げた。水野も暴れるのをやめて目を丸くして金井を見ている。他の部員も似たような様子だ。
金井は足を揃えて正座し、目を細めて部員全員を見渡してから、額を地面にぶつけてこう言った。
「すみませんでした!!」
金井には今、こう謝る事しか出来なかった。
全てを話すのが筋かも知れないが、自分が部活を辞めていた事を話すのは加代子の想いを無にする事になる。
だから金井は誠心誠意を込めて、自分がしてしまった事を皆に頭を下げて謝るしか出来なかった。
「なんだよ?仕方ないだろ、熱が出ちまったんだから。まぁ、体調管理は自己責任だけど熱も下がったていうし、そんなに謝る事じゃないって。なぁ?」
悠は後ろを振り向き、皆に同意を求めた。
皆は頷くなり、返事をするなりをして悠の言葉を肯定する。
「そーそー!気にするなって。一度や二度くらいは部活を休む事だってあるさ」
すっかり泣き止み、いつもの調子に戻った水野が土下座している金井の近くまで歩み寄って、しゃがんで肩を叩いた。
「もう……二度と、休まないよ」
金井はしばらく土下座したままだった。
自分の情けない泣き顔なんて申し訳なくて、皆に見せられなかったから。
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