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茹だる熱気は加減する気配がない。立っているだけで汗が流れていく。
太陽に試されているかのような中で少年達は青春を賭けた闘いを繰り広げる。
地区大会準々決勝の球場のマウンドで悠と凉介は顔が触れるかという距離にまで近づいていた。
二人の間に流れる空気は穏やかな物ではない。話し合うというよりはいがみ合うといった具合だ。
眉間にしわを寄せ、微妙な上目づかいで互いを見据えている。
試合中であろうといがみ合う事は二人にとって日常茶飯事だったが、どうも様子が違った。
二人の間には言葉がない。
相手に自分の腹の底で煮えたぎった思いを見せてやろうと見開いた瞳を向けている。
普段ならば小学生のような言い合いをして終わるのだが、今日は嫌味たらしいやり取りが行われていたのだった。
四回の裏、1アウト、宮島商業の攻撃、走者1、3塁、試合は1対4で清心がリード。
いくらピンチの場面とは言え、このようないがみ合いが二人の間で行われるのは今までにない事だった。
きっかけは些細なミスだった。
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