近くて、遠くて

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金井は凉介に向かって言った。 凉介はなぜ自分にだけ、という顔をしたが、特に反論はしなかった。 「お前ら、これが甲子園賭けた試合だってわかってんの?ここで負けたらこれまでの努力やら今まで勝ってきたのが一瞬でパーなの?もしかしたら、お前らのガキ臭い喧嘩が原因で」 「それは……わかってる」 「んなの当たり前だ。俺はもっと気を使えって言ってんだよ、キャプテン」 金井は凉介を軽く睨んで、目つきそのままに悠の方へと顔を向けた。 「お前ら、自分の立場よく考えろって。こんな言い方したかないけど、試合がお前らの良し悪しで決まる事だってあるんだから。頼むよ、マジで。エースよ」 悠は目を合わそうとしないかったが、それは自分の負い目をわかっているからだった。 「そりゃあ、いきなり、びっくりホームランが出たら誰でもいらつくけどよ」 金井が言ったのはアウトを取った直後に打たれたホームランの事だ。 これまで好調で完璧な投球をしていた悠が全く警戒していなかった選手に打たれたまさかのホームラン。 二人はホームランという単語を聞いて、わずかに肩をびくっと震わせた。 やはり二人の中にはそのホームランがまだ引っ掛かっていて、そのいらつきがこの喧嘩を引き起こしたようだ。
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