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「たしかに気に入らない点の取られ方だけど、たかが一点だからよ。忘れて、こっからまた始めていこう、な?」
向くべき方向を見失ったチームメイトには時に厳しい態度で対し、あるべき道に戻す。
特にチーム内でも強烈な尊敬を集める二人にそれが出来るのは金井だけであった。
「うし!じゃあ仕切直しだ!」
悠と凉介は互いに頷いた。金井の言葉は胸に届いたらしい。
頷いたのを見て皆、安心してポジションへと戻ってく。
だが、二人のすれ違いは何一つ解決していなかったのである。
二人は相手を疑い、怒ったまま試合は再開した。
金井の対応は適切であった。何も間違っていない。
悠と凉介がやはり一筋縄ではいかない間柄だっただけだ。
悠は本調子とは思えないボールを投げていた。
スピードはおろか、勢いさえ失っているストレート。
凉介のリードも冴えない。いつものような弱点を的確に攻める配球は見られなかった。
そんな投球を見逃してくれる相手など、地区大会の準々決勝に残れるはずもない。
集中打を浴び、あれよあれよという間に点差は縮まっていく。
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