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吐く息が白くなるほど寒い日、僕とリュウタはイヤホンを買いに街へ出た。
いつも身に付けていたイヤホンが壊れてしまったらしい。
何もこんな寒い日に買いに行かなくてもいいと思うんだけど……。
イヤホンがないと落ちつかないらしい。
「カメちゃん、寒いー」
当の本人もここまで外が寒かったとは思っていなかったらしく、そんな言葉を連呼する。
まぁ、僕たちの服装にも問題はあるのかもしれない。
私服にマフラーだけ。
これでは全然寒さを防げていない。
リュウタは冷え切っている手を何度も摩っている。
「手、繋ぐ?」
「えっ……な、なんで」
「だってリュウタ寒そうだし、手を繋げば少しは温かくなるんじゃない?」
少しでも温かくしてあげたいと思い僕はそう言った。
だがリュウタは周りを一度見渡せば首を横に振る。
「男同士でそんな事できないよ」
そんな事を言って断った。
デンライナーの中じゃ、そんな事気にせずにくっついてきてくれるのに。
……いや、ほとんど僕からちょっかいを出してるか。
リュウタが人目を気にして断った事は様子をみればすぐにわかった。
変なところで気にしすぎなんだ。
どこでも踊りだすのに。
愛理さんの前ではいつも以上に子供になるのに。
こういう事には周囲の目を気にする。
むしろこういう事の方が目立たないものなのに。
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